高齢者ドライバーの事故が多発している。その中で、命を落とす事故もたくさん報道されていて、その報道を見る度に心が痛まれる。
そんな報道がたくさんある中で、本屋である本を見つけた。
「高齢者ドライバー必見!免許に合格するための本」やら「運転免許更新のためにこれをやっておけば安心!脳活ドリル」
などといった、高齢者用ドライバー向けの対策本が売り出されているのである。
作業療法士のわたしは、この本を見て「これは冗談なのか?」と疑った。
何が問題なのか、これを紐解いていく。
Contents
高齢ドライバー用の免許更新対策本の何が問題なのか?
運転の能力には3つの能力が必要となる。目や耳で障害物を「認知」する能力、ブレーキや危険回避をしないといけない「判断」する能力、このふたつに対応できる「運転操作」する能力である。
高齢ドライバーについて問題となるのは、「認知」する能力、「判断」する能力が低下することである。
もちろん認知機能が低下したことに対して、対策本で脳トレをすることで、脳への刺激をすることはとても大事である。
それは、認知症に詳しい研究者たちも良いといわれている。
しかしこの対策本で問題になるのは、免許更新時、75歳以上の高齢者に行なわれる実際の認知機能検査の問題がまるまる記載されている、ということだ
この検査をのせていたら、実際の検査のときにほぼ100%合格してしまうだろう。
それでは、危険な運転をしてしまうであろう高齢ドライバーを更新試験を通してふるいにかけている意味がなくなってしまう。
対策しておこなえるから、検査の意味がなくなる
なぜ検査をのせていたら、100%合格してしまうか。
それは、実際の高齢者ドライバーの検査は、単純なものだからだ。
毎回時間がかかる検査をしていたら、検査している側はキャパオーバーしてしまう。そのため、免許管理センターが短い時間で簡単に行える認知検査だけ実施している。
上記で話した「認知」する能力は検査しているが、運転でもっとも必要とされるその場にあった「判断」する能力は検査されないのだ。
「判断」する能力は、「認知」する能力よりも求められるレベルが高く、検査する方法も時間がかかる。「認知」されてはじめて人は「判断」する機能を働かせる。
そのため、「認知」する能力が引っかかれば、必ず「判断」する能力も引っかかる、ということになる。
問題は、運転免許更新時の「認知」機能の検査に対して、対策本が出てしまっている、ということだ。
なぜなら、あらかじめ認知機能に対する検査項目が分かっていたら、対策ができてしまう。その対策ができるのであれば、その人の認知機能は大丈夫じゃないの?と見なされてしまう。
対策本で予習をした上で、認知機能検査を受けられてしまっては、本当に確認したい能力が測れず、検査の意味がなくなってしまう。
そうやって危ない運転をする可能性のある高齢者ドライバーが、検査に引っかからず、世の中で事故を起こしてしまうのだ。
医師が監修していることや誇大したキャッチコピーに騙されてはいけない
本の中には、医師が監修をしていたり、これをすれば絶対合格する!といった強烈なあおりがなされているものが多い。
一度、考えてみてほしい。
確かに、車がないと生活ができなくなる高齢者がいるとおもう。
でも、それで事故を起こす助長をさせていいのだろうか。
認知機能をよくするドリルであっても、運転する機能を上げるドリルではないということを理解していただきたい。
ドリルではなく、他の脳トレを使うことが推奨される
運転する能力に1番必要なものは、瞬時の判断ができるかどうかだと考える。
それは、免許更新のときには検査されないが、それを培うアプリがある。
それは、ニンテンドーDSの「脳トレ」の開発者である川島教授が作っている高齢者ドライバー向け「脳トレ」アプリ。
記事の内容をみたが、「判断」する能力を培うものが多く、運転能力を似た問題が多くあるため、このアプリのほうが、効果的だと考える。
しかし、まだ実用的に使えるわけではないため、早くリリースを待ちたい。
対策本をするよりも、日々、認知機能を上げるために脳を使う機会をつくっていただきたいとおもう。